HIRO MATSUOKA


Scenes and Stories

Hiro Matsuoka


街で出逢った風景


ある意味で、写真作品ほど作家の主観的な見方が直接表現されるメディアはないのでは、と思うことがよくある。写真は必ず実存する対象を必要とするが、一見客観性を帯び、作家の意思から独立した存在であるはずの撮影対象は、視点、つまりカメラの位置を変えるだけで、それまで全く予想さえしなかった顔を見せることになるからである。現実に存在する物や人物を撮影しているにも拘わらず、写真作品が「虚構の世界」を提示できるのは、作家と言うフィルターを通しているからに他ならない。

自分を引きつける何かを持った風景や状況を、撮影と暗室作業を通して印画紙上にひとつの「絵」として成立させる作業は、それまでの長い思考の末に構築された理論を常に現在進行形で自分のコントロールなど及ばない外の世界という具体的な対象に折り合わせることでもある。厳しい現実を前に、自分の理想が完全にヴィジュアル化されることなどあり得ないが、時折、偶然の結果として自分にはそれまで想像さえできなかった「絵」を目の当たりにすることがある。

そんな時、街の日常風景が小説よりもストーリー性に満ち、劇場よりもライヴな表現を内包していることをあらためて思い知らされるのである。



— Zeit Foto Salon, January 2009